「今日という日は、このために」
#7 遥か遠くの存在
1990年2月14日、アメリカNASAの宇宙探査機ボイジャー1号が約60億キロ彼方から、地球からの声に応えて撮った一枚の写真を見て、カール・セーガン博士は机を叩きながら、こう叫んだと言います。
「諸君、これが我々なんだ!」
ボイジャー計画のリーダーの一人だった博士によって「Pale Blue Dot」と名付けられたこの写真には、文字通り漆黒の闇に今にも消え入りそうな、淡いブルーに輝く小さな光が映っていました。それは、人類が初めて目にする最も遠いところからの地球の姿。この一粒の光の中で、私たちは笑い、歌い、争い、涙し、そして生き続けてきたのです。
さらに、博士は続けました。
「もしこの小さな点の中で何かがあったとしても、誰も助けに来てくれる気配なんてないよね、それが我々なんだ」と。
考えてみれば、我々は青く輝く美しい地球の姿をよく知っています。いや、知っているつもりでいます。しかし、ホールアース、丸い地球の姿を見た人類はごくわずか。月に向かったアポロ宇宙飛行士のわずか二十数名と言われています。なのに、私たちはまん丸の青い地球をまるで見たかのように知り得ています。
これは、遠い世界へはおいそれと行くことはできないけれど、たった一枚の丸い地球の写真が、自分の身近に感じることのできる何かと感覚的な橋渡しをしてくれているのかもしれません。そう考えると、遥か遠くの存在と身近なものとが、想像することで自分を介してつながっているとも思えてくるのです。
NASAの壁一面に掲げられた「Pale Blue Dot」の写真を初めて目にしてから35年を経た今、私はそのことに初めて気付かされたような気がします。心の中で、やっと何かを感じることができたような思いというか。
理論物理学者の佐治晴夫先生が、映画「Pale Blue Dot 君が微笑めば、」の中で、こんなことを話されています。「感じることができて想像することができるというものが、僕は“心”だと思います。」
2026年2月現在、ボイジャー1号は約250億キロ彼方の宇宙から、今も語りかけています。遥か遠くの存在に、私たちは何を感じることができるでしょう。

※カール・セーガン博士:宇宙の魅力を伝えた米国の天文学者・科学者。著書『コスモス』や、映画『コンタクト』の原作で知られる。博士が語った「Pale Blue Dot」原文を佐治晴夫先生に翻訳いただき、映画パンフレットに収めています。






